「Y理論」の意味
Y理論とは、1950年代にアメリカの心理・経営学者ダグラス・マクレガーにより提唱された道義付け、人間観に関わる対立する理論、“X理論・Y理論”の一つです。 即ちX理論とは、「人間とは本来なまけたがる生き物で放っておくと仕事はしたがらず、責任をとろうとしない」という性悪説に基づく考え方です。この場合経営の場では、仕事を命令や矯正で管理し、目標が達成できなければ懲罰を課すという“アメとムチ”の経営手法となり、労働者の欲求が低次元の場合は機能的な手法となります。 一方Y理論では、「人間は本来自ら進んで仕事をしたがる生き物で、自己実現のために行動し、進んで問題解決に立ち向かう」という性善説に基づく考え方です。この場合経営の場では、労働者の自主性を尊重する経営手法となり、労働者がより高次元の欲求を持っている時に有効となります。 社会の生活水準が向上し、生理的欲求や安全欲求(マズローの欲求五段階における初期の欲求)等の低次欲求が満たされている現代社会においては、Y理論に基づいた経営管理が適しているとマクレガーは主張しました。 しかし現代社会において、マクレガーのY理論が100%あてはまるというものではなく、その不足点を補足し修正を加えたのがマズローです。マズローは、貧困な状況に置かれた発展途上国の問題などにおける人間性を指摘し、ある企業が置かれた社会環境が低次元の欲求に支配されていればY理論に基づく経営は成立しないとしました。貧困からくる金銭的欲求によって、目先の利益追求を優先することにより、本来のY理論的な経営は成立し得ないというわけです。 これらの理論を現実のわれわれの社会にあてはめて考えた場合、この二種類のどちらかにすべての人間を区分することは困難であり、この両極端のX-Yを結ぶ範囲のどこかにすべての人が位置しているという考えが妥当です。自己尊厳欲求の強い部下組織に対しては、リーダーの部下に対する信頼、即ちY理論に基づく行動が大きな力となります。故に現代社会においてリーダーは、部下組織の欲求に対して、意識的にY理論的行動を実践することが求められるのです。