「コンセプチュアル・スキル」の意味
コンセプチュアル・スキルは、テクニカル・スキル、ヒューマン・スキルと共に、米ハーバード大学のロバート・カッツ教授によって提唱された、三つのスキルの一つです。日本語になおすと「概念化能力」という分かりづらい名前になりますが、周囲の物事や状況を把握、構造化し、山積している問題の中から、本質を見出す能力となります。 このコンセプチュアル・スキルでは、特に「見えていない課題」や「全体像の把握」という点に比重が置かれている、という特徴があります。例えば人手不足などに悩む飲食店があるとして、目の前にある「人員不足」や「アルバイトのミスが多い」といった課題に対する対策を練り出すのではなく、「何年後に店舗を拡大する」という目標の元に、どのような優先順位をつけたり対策を講じたり、ということが大切になります。例で言えば、単純に人の補充をするだけではなく、アルバイトなどの従業員の不満などを聞き取って、根本的に改善しなければならない部分はないかを考えたり、明文化可能な部分は全てマニュアル化をして徹底したり、という方法を考えることなどがあげられます。 このように、マネージャーの中でも、特に上位(一般的に部長と呼ばれるクラス)になるほどに強く求められるものとされています。資金や求人といった部分にもかなり密接になるため、一般社員ではなかなか身につけることは難しい能力です。 ただ、だからと言って上位職にのみ求められるか、と言われるとそうではありません。そもそもの概念は、「課題を見出し、その対策を考え、実行する力」ですので、新人であろうとも若手であろうとも、そのスキルを身につけておくに、こしたことはありません。 大切かつ難しい点は、「実行する力」までを含めて、コンセプチュアル・スキルであるということです。言うは易し、行うは難し、ということわざが示す通り、課題を掌握して対策することは生半なことではなく、口ばかりになってしまうことも多々あるでしょう。 しかし、別の見方をすれば「実行できない(しづらい)対策は、そもそも対策ではない」ので、「考える」という工程において、改善の余地があることを示します。そういうところで躓いた時は、例えそれが素晴らしい最善手であったとしても、より実現可能な対策を今一度練り直す方がよいでしょう。そういった思考方法を繰り返すことで、スキルが身についていくのです。